田山花袋
2009年 09月 11日
あいかわらず読書がやめられない。
明治・大正時代の作家の本っていうのは、何でこんなに面白くて、読み応えがあるんだろう。
昨日も古本屋で三冊100円のコーナーがあったので、適当な文庫をありったけ購入した。
それで、先ほどまで田山花袋の「蒲団」という小説を読んでいたのですが、これは凄いぞ!
もうなんか、爆笑しながら読んでしまった。
別に笑わせるような文体ではなくて、終始シリアスなのだけれど、主人公である中年小説家・竹中時雄の心理描写があまりに赤裸々過ぎて、笑いが止まらなかった。
妻子もある中年小説家・竹中時雄が、自作のファンであるといううら若き女学生・芳子を弟子に取る。
家の二階に住まわせるのだ。妻は良い顔をしない。当然である。
芳子は、女性の解放を謡うような近代的女性だ。その思想に時雄も共感し、黙って家事をこなす様な旧弊なタイプの妻を馬鹿にしたりする。
今まで、生活からの抑圧と自作の停滞でいらいらしていた時雄だったが、芳子が家に来た事によって、急に生活に張りが出てくる。芳子とのすけべな妄想に耽ったりする。
しかしある日、芳子に恋人が出来てしまう。ここからが凄まじい。
芳子の帰りが遅い日は「どこぞで彼氏とヤッているのでは」と疑って、酒に溺れて、妻にあたって膳を蹴飛ばしたり、蒲団を被ったまま便所に行って寝たり、「監督者としての義務」という名目の元、芳子と恋人とのラブレターを無断で漁って、文章の中に性欲を匂わす言葉が隠れていないかと探したり・・・。
しまいには故郷から芳子の父親を呼んで、二人を引き離そうとする始末。
その時も芳子には、「彼女の父親に温情を求める心優しき師」に見えるように努力したりと、なかなか卑怯な男である。
後半、時雄は芳子が処女でない事を知ると、「女性の解放」を共に掲げていた癖に激怒して、「どうせ処女でないなら一発くらいヤッておけば良かった・・・」、と激しく後悔したり、「今からでも芳子の弱みを突いて脅してヤッてしまおうか」と妄想したり、・・・このおじさん。
後ろめたい、心の奥に秘めた感情を、一切隠さずに露骨な程さらけ出した、花袋の覚悟が凄い。
だってこれは、今から百年以上も前に書かれた本なのだ。
花袋も、自身の体験が元になっていると公言しているだけあって、「蒲団」発表後の親戚の目なんかは相当厳しかったらしいが、そりゃそうだろ・・・
いやあ面白かった。
何か馬鹿な感想しか書けないので、とにかく気になった方はぜひ読んでみてください。
by kan328328
| 2009-09-11 22:42
| 日常