父へ

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あなたの息子が作った美術作品が、2月3日から岡本太郎美術館で展示されますよ。
一人で紙粘土をゴテゴテこねながら作り上げた、巨大な壁画ですよ。
気になるなら、見に来てください。
会場で20年ぶりの親子再会を果たしましょうよ。
自分に息子がいた事を、あなたは覚えているのでしょうか?
元気にしているんでしょうか?
今も画家をしていますか?
油絵をいっぱい描いていますか?
それか再婚でもして、どこかでのんびり幸せに暮らしているんですか?
家を出て行って以来、一度も連絡をしてきてくれませんでしたね。

最後にあなたの姿を見たのは、僕がまだ小学生の頃ですよ。
寒いアトリエの中で絵の具まみれになりながら、巨大なキャンバスに筆を叩きつけていましたね。その姿を眺めているのが、僕は結構好きでしたよ。会えなくなるとは夢にも思いませんでしたよ。
出て行く時あなたは、僕じゃなくて姉を連れて行こうとしたそうですね。
僕もいい年だし、いまさら恨みがましい事をとやかく言うつもりはないですが。
僕ももう32歳になりましたよ。
人の親になったし、子供は2歳半になりましたよ。
あなたにも抱っこさせてあげたいくらい可愛い息子ですよ。
家庭を捨てて身軽になって、どこか遠くの地であらたな人生を歩んでいるのでしょうか。それでも、あなたがおじいちゃんになった事に変わりはないんですよ。

あなたが昔、渾身の思いで描いた巨大な油絵たちは、まだ高崎のアトリエに残されたままですよ。
すっかりホコリをかぶったまま、いつかどこかで展示される日を、今か今かと待ち続けていますよ。 どの絵も暗い雰囲気で、抽象的で、さっぱり意味がわからなかったけど、ようやく最近になってその良さがわかってきましたよ。
このブログをどこかで見ているのなら、川崎の岡本太郎美術館に僕の作った壁画を見に来てくださいよ。

僕もあなたと同じように、打たれ弱くて、臆病な性格の大人に育ってしまいました。
でも僕はこの作品の中で、精一杯「生きている‼︎」と叫んだつもりですよ。
by kan328328 | 2016-01-13 18:29 | 日常

美術作家・三宅感のブログです


by kan miyake
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