ハクモクレンとぼんやり

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一昨日の夜のこと。

保育園に息子をむかえに行った。
手をつないで一緒に歩きたい俺は、自転車にはあまり乗らない。

息子は、園庭に咲いたハクモクレンを見ると、
「ケムシオバケ、コワい!パパダッコ!!」
と、しがみついてくる。
冬になると、銀色の毛におおわれた花芽をつけるハクモクレン。
それが息子には、なんだか得体のしれない生き物に見えるようだ。

息子をダッコして、すっかり日のくれた住宅街を帰りゆく。
通りを突きあたったところで、「地域センター」なる施設をみつけた。
うす闇の中、ぼんやりと青白いライトに照らされている受付。
その奥にひとり、青い服をきたおばさんが座っている。

ホッパーの絵画みたいだなあ、と思った。
心を惹かれた。

なんとなく、どこかに寄り道してから帰りたい気もあり、
息子に「入ってみる?」とたずねる。
だまってうなずくものの、表情がかたい息子。
多少、恐怖を感じているんだろう。

ガラスドアを押して中に入る。
しずかだ。物音ひとつしない。
ろう下の奥は電気も消え、まっくらだ。
と、受付のおばさんがすくりと立ちあがり、右手を伸ばして笑った。
口もとが何やらモゾモゾと動いて、
「ハイ、コンバンワー」とつぶやくのがわかった。

しん、とうす暗いロビーを見渡す。
ダッコが重かったので、とりあえずイスに座ろうと思った。
息子を下ろし、ふと横を向くと、たくさん人がいた。
「わ!」と思わず声が出てしまった。
心臓が止まるかと思った。

だるそうにソファーにうなだれている中学生3人。
輪になってヒソヒソ会議をしているママさんが4人。
みんな、ぴくりとも気配を見せないから、まったく気がつかなかった。

部屋のすみには、ピンク色のこども用すべり台が置いてある。
じーっと遊びたげな視線をおくる息子。
背中をポン、とうながしてあげると、恐る恐るすべり台に近づいていく。

一段一段、音をたてずに、そろそろと登っていく。
2歳児なりに部屋の空気を読んでいるのが、なんだか可笑しい。
それにしてもこの静まりようは何だろう?

真顔のまま、すべり台をシュルシュルとすべり落ちる息子。
スロープの最後が段差になっており、どちーんと尻から着地。
「へへっ!」と笑い、なぜか中学生たちの方にドヤ顔する息子、ガン無視される。

毒にでも当たったかのように、ぐったりしている中学生たち。どうした?
そんなことはおかまいなしに、穴からにょきっと顔を出す息子、
「イラッシャイマセ〜」と、接客のマネをはじめる。
俺は気づかないフリをして顔をそむけていたが、
「カンチャン、イラッシャイマセ〜」と名指しで呼ぶので、やむなくすべり台のまえに座る。
いつものお店やさんごっこである。
よし、ここは太っ腹なお客になってやろうと思い、
「えっと、じゃあビッグマックとチーズバーガーとポテトと…」
と言い終わらぬうちに、すべり台をすべって行ってしまう息子。


地域センター。
なんだかとても落ち着く場所だ。

時間が止まってしまったかのように、静かで、暗くて、無関心だ。
さっきまでいたママさんたちも、いつの間にかいなくなっていた。
思えばいつも、頭の中にこういうムードが漂っていたな。
心地よい暗さのなかで、ぼんやりしていたい。

自分がツイッターやSNSの速度に追いつけない理由が、なんとなくわかった気がした。





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by kan328328 | 2016-03-20 18:34 | 日常

美術作家・三宅感のブログです


by kan miyake
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