けむりが目にしみる

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25才までタバコを吸っていた。
1日に1箱くらい。
それと同時にぜんそくの治療もしていた。

「毒と薬でプラマイゼロじゃね?」

そう心から信じこんでいたのだ。
あのころ、若さよりもバカさが光り輝いていた。


ある日、病院の先生に愛想をつかされた。

「タバコやめないなら、もう来なくていいよ。」


途端に、はずかしくなった。まるで自分が、
おしゃぶりを手放せない園児のように思え、

「もうやめよう」と、心にきめた。


離脱症状は、なかなかの苦しみであった。
口の中の異常なかわきと、
全身(とくに手足や頭などの末端)のしびれ。


街をふらついているときに、
ケータイが鳴ってると思ってポケットに手を入れると、
自分の太ももが震えてるだけだったり、

パソコンの電源を落とした時に、ふと、
モニターに反射した自分の口が半開きだったり、

エンピツやわりばしを無性にくわえたくなったり、

禁煙活動後1週間くらいは、
やたらと体がにぎやかで、
人知れず、俺フェスが開催されているようだった。

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それから9年が経った。

いまだタバコは1本も吸っていないが、
月に1度はかならず夢をみる。

タバコの先に火をつけて吸いこむ。
ジリジリ…と火種がオレンジに発光し、
たしかなノドごたえを味わってから、
ゆっくりと煙を吐きだす。


「フー、うめえなあ…」


そして、すぐに後悔が襲ってくる。


「あ〜、9年間つづいた忍耐を、
たった一吸いで棒にふってしまった…」


すると、何ともやりきれなくなり、
「こうなりゃとことん吸うまでだ」と、
何本も火をつけてヤケ吸いする所で目が覚め、

「なんだ、夢か…」

と、涙をぬぐう。
そのくり返しである。

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俺はべつに嫌煙家ではない。
(他人のタバコの香りは好きだ)
これはあくまで、自分のモンダイなのである。


誰しも、自分に課したルールを守りつづけると、
じょじょに、自尊心が底上げされていくものである。
やればできるじゃん、オレ!と。

筋トレだったり、
ダイエットであったり、
資格取得やブログもそうだし、

それが俺でいえば「禁煙」という行為であった。
ただそれだけである。

なので、その初歩的ルールすら守れずに、
うっかり吸ってしまえば、やがては、
なしくずし的に全ての欲望があふれだすかもしれない。


反動のビッグウェーブにおそわれたとき、
はたして自分は、正気を保っていられるだろうか?


庭に出れば大声はりあげながら乾布摩擦をし、

風呂に入れば花王のバブに食らいつき、

外に出れば自転車のベルを鳴らしまくって徘徊するといった、

収拾のつかないフリーダムになりはしないか?


そんな不安を胸に、
俺は今日も禁煙している。



by kan328328 | 2017-05-18 13:11 | 思い出 | Comments(0)

美術作家・三宅感のブログです


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