西武線ブルース
2018年 06月 30日

こうして展示が終わり、
私もまた生活者へと戻っていく。一介のヘルパーとして同じ家に出向くため、
同じ自販機で同じコーヒーを買って飲み、
同じ改札を通って同じ電車にのる。
「一秒たりとて同じ瞬間はない」
と言い聞かせつつ、同じ車窓から外を見る。
やっぱ変わらん、おんなじ景色。
東京の風景は灰青色でコントラストが弱く、
どこを見渡しても90年代のVシネマっぽい空気。
そこにドンキホーテやら、プロミスやら、
タイムズ駐車場やら、イエローハットやら、
遠目にもイエローな看板が節度なく混じりあい、
出たとこ勝負の黄色がハンパない。
大学デビューで金髪にした男子のような、
小アジア感ハンパないって。
西武線車内でながれる液晶モニターは、
無音のクセにテンション高し。
お天気予報のじぇいわくんは、
すでに出勤中の乗客に「傘を持って家を出てね」
とニアミス、
陰惨なバラバラ殺人をニュースが報じたあとで、
どこかのミス女子大がピョンピョン跳びはね、
「とーっても新鮮なんです!!」
高いヒールでオー!!とジャンプし、
着地でヨロける仕草がオジさんには効果的と、
安易に見積もるミス女のあざとさ。

到着駅で人ごみに押し流されながら、
いったい海鮮が新鮮なのか死体が新鮮なのか、
わけわからないままの我々乗客は、ひじ鉄オジさんに背中をどつかれ、
階段2段飛びオジさんの接近におびえ、
女子高生の背負ったナギナタに頭を叩かれ、
旅行女子の引きずる巨大トランクに足をプレスされ、
サラリーマンに傘で突つかれ、子供はまたがれて、
学生のイヤホンは引っぱられ、OLはスマホを落とし、
オジさんはグラビアページをグリグリ丸めて隠し持ち、
若作りのギャル服オバさんは優先席に飛びかかり、
低身長アピール娘の上目遣いは必ず目ヤニ付いてて、
老婆は不気味なビニール袋を置き忘れてるし、
ひっくり返ったカナブン超パニクってるし、
ああ、今日もいつもと同じ光景。

無関心のカタマリ西武線よ、空を飛んで、
あの娘の胸に突き刺され。
by kan328328
| 2018-06-30 09:12
| 日常