はずかしいノイズ

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群馬にゆかりのあるアーティストとして、
FM群馬ラジオに取材していただきました。

11月28日(水)18時〜19時
「ユウガチャ!」

という番組内で10分くらい紹介されるとの事。
ネットラジオのラジコでも聴けるらしいので、
時間がある人はぜひチェックしてみて下さい。

で、最近の私。

近所の図書館には一般に開かれた学習室があり、
たまに出向いてはカリカリと執筆している。

新しい作品のアイデアだ。

来月、前橋でやる個展が終わったら、
さっそく制作に取りかかろうと思う。

学習室にはいつも何人かの利用者がいて、
みんな音もたてず静かに勉強している。
何か聞こえてきたとしても、
ペラ、ペラ・・・とページを繰る音や、
スッ、スッとひかえめな衣擦れくらい。

その緊張感にうながされ、俺もノートを出す。

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俺がいつも持ち歩いているアイデアノートには、
落書きやコラージュがヤマトノリでベタベタ貼ってある。
文字は写経のようにビッシリと書き込まれ、
そのぶ厚い見た目と相まって、ただただ怪しい。

ページを開く。

バリ、バリ・・・

いやな音がなる。
ノリが乾いて、ページが固まっているのだ。

ベコ。

メキ、メキ・・・

ベリィッ!!

昼下がりの学習室に怪音が響きわたる。
勉強中の学生たちがいっせいにふり返り、
俺の異様なアイデアノートを一瞥すると、

「なんかヤベーの来てる」

という具合に顔を背ける。
そんなよそよそしい空気に傷つきつつ、
俺は細心の注意を払ってページをめくる。

ベコォ

ビリィ・・・

はずかしいノイズは止まらず、
俺は頭の中で、

「ダイバーシティ、ダイバーシティ…」

と、前向きな呪文を唱えるが、
疎外感は強まるばかり。
俺は観念してアイデアノートをしまい、
ブログ執筆に切り換える。

久しく書いていないブログ画面を前に、
最近何があっただろうと思い返してみる。

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息子とガチのコリントゲームを作ったこと。

家族で初めて鹿児島旅行に出かけたこと。

カブトムシを20匹捕まえて近所に配り、
卵から幼虫を孵化させて押入れで飼っていること。

中学の同窓会に初めて出席し、
20年ぶりの旧友たちと再開したこと。

学生時代にベスパを盗まれた痛手があるのに、
性懲りもなく20万の中古バイクを購入して、
初日に転倒したこと。

なんか20という数字が並んだけど・・・

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今年の夏は色々あったものの、
ほとんど記録せずにスルーしてしまった。
いや、
何度か文章化しようと試みたのだ。
記憶の鮮度が落ちぬうちに、
キーボードをポツポツと押し始める。
が、

ふと虚しくなって、全部削除してしまう。

そのくり返しであった。

太宰治のトカトントンじゃないけれど、
「何だかなぁ」という虚しさに捕らわれると、
パタンと液晶を閉じてしまうのだ。

そんで空を見る。

学習室の窓から見えるのは、
向かいの建物の屋上と白い雲だけ。
そこに俺の心がまったりと溶けこんでいく。

晴れた日の川面で小石が光るように、
ぼんやりとした想念のあちらこちらで、
キラキラと反射するモノがある。

それを意識の網の目で丹念にこしてみれば、
光っているモノの正体がじつは、
過去に友人たちの発した言葉だったとわかる。

普段なにげない会話の中で、
友人達がつぶやいた一言がまるで砂金のように、
俺の心の中にずーっと沈殿していたのだ。

以下、
ランダムに書き記してみた。
至極のアフォリズムが揃っていると思う。

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俺「年をとって初期衝動に頼れなくなってきたよ」
R「青春が終わってから本当の表現が始まるんじゃろ」


俺「テーマばかり先行した作品には愛がないよな」
S「人が物を作るという行為自体、愛だと思います」


俺「俺は方法論で物作りはしないからさ」
K「それも方法論の一つですよ」


俺「死んだ花嫁の結婚式を映画で撮りたいんだ」
M「何がめでたくてそんなバカバカしいもん撮るの?」


俺「僕は時事的な作品なんか作りたくないんです」
I先生「どんな作品にも時代性がクッキリと刻印されていて、作家はそこから逃れることはできない」


俺「女同士の会話って男の話題ばっかだな」
N「まー、それが人生なんじゃね?」


俺「人には色々な事情があるし一概に否定できないね」
K「うん、正論。ほんとつまらない正論」


俺「瞑想したら毎日健康になって鬱病も治ってさ」
T「オメェクソつまらねぇ人間になりやがって」


先日亡くなった親戚の女性
「(俺の壁画を見て)あーこれは家庭を棒に振ってこしらえたモンですなぁ」


S「ろくに制作していないと相手の顔を直視できんだろ?」

などである。

書き出してみると、
人ってなにげない会話の中で、
こんなにも味わい深い言葉を発するのかと、
感動してしまう。

今まで自分も、
こういう言葉にはげまされたり、
思い出し笑いを誘発されたり、
背すじを伸ばしつづけてきたんだっけか。

俺のタワゴトを瞬時に斬り捨てる返答も多く、
それもなんだか笑ってしまう。

友人との会話をこれからも大切にしたい。

by kan328328 | 2018-11-25 01:03 | 日常

美術作家・三宅感のブログです


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