あけましておめでとうございます。
人生で初めてインフルエンザにかかった。
39度近い熱が4日以上つづき、
強烈な頭痛、悪寒、吐き気とともに、
妄想とも現実ともつかない光景が、
頭と目の中間でグルグル回りつづける。
いかつい男同士の手が組み合って、
ひたすら親指相撲をしている。
そのくんずほぐれつする肉弾戦から、
気持ちが悪いのに目が離せない。
病院から処方された薬には、
「インフルエンザ患者は、
幻覚を見る場合があります。
窓から飛び降りる恐れがあるので、
なるべく一階に寝かせてください。」
とあった。
でもここは二階で、一階は駐車場だ。
いっそ飛び降りてしまいたいくらい、
暗澹たる心持ち。回復の兆しもなく、
時間だけがどんどん過ぎて行く。
気を抜くと、
「自分は何者でもないんだな。
たまたま今は美術に携わってるだけで、
実は人生のド素人、何の才能もない奴だ」
という暗い考えが、
妙なリアリティを帯びてきてしまう。
気をまぎらわすためにメールを開くと、
Facebookから「もっと友達を作ろう」
という催促メールが来ている。
いつもは削除するだけのメールを、
この日ばかりは余計なお世話だ、と思う。
Facebookは俺に何を期待しているのだ?
どんな人間と仲良くした所で、最後には、
持て余した自分と突き当たるだけだよ!
と、いちいち被害妄想スイッチが入り、
そんなメンドくさい自分が嫌でたまらない。
こんなデリケートに養生してるのも嫌だ。
食欲も全然わいてこず、
ずっとアイスの実ばかり食べていた。
朝から晩までアイスの実を食べていた。
布団の中では、ほてった頭を起こして、
アイスの実のパッケージを、裏と表と、
飽くなく眺めつづけた。
マスカット味は果汁が80%も入っており、
「100円でそこまでするか…」
という驚きで、しばらく放心状態になる。
怒るポイントも、感動するポイントも、
わりと派手にズレている自覚はあるが、
それを軌道修正する気力もない。
「いっそ熱が下がるまでは、
この狂った脳みそと仲良くしよう」
と思った。
美術作家・三宅感のブログです
by kan miyake
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