ジェネシスPオリッジさん、さようなら

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[嬉々として紙粘土をこねくり回す三宅感(友人撮影)]


新型コロナウイルス感染拡大防止のため、
緊急事態宣言が発令。ここまで強固な自粛ムードでは、
表現者たちはもはやカメラ、ギター、絵筆を持たず、
ダイレクトな社会貢献に全意識を奪われてしまうのか。

そして俺もまた現在、
前橋のアートセンター・ya-gins(ヤーギンズ)にて、
「あきらめの水位」展を開催中ではあるけど、

「自分が保菌者かもしれないと思って帰省は自粛して!」

と流れ続けるニューステロップを受け入れ、
やむなく東京に引きこもる事に決めたのだった。
(とは言え平日は仕事があるので外出せざるを得ないけど)

こうして世界中が混乱に陥る中、
僕が敬愛する前衛アーティストで音楽家の、
ジェネシス・P・オリッジさんが先月3月14日、
長年患った白血病により、ひっそりと息を引き取った。



失業者の急増と人種差別が加速する70年代後半の英国で、
工業化する社会と画一的食品で家畜化される人類に対し、
凶悪なノイズでもって「NO!」を突き付けたバンド、
スロッビング・グリッスル。

その中心人物でもあるジェネシスさんは、
スロッビング・グリッスル解散後はサイキックTVを結成、
中毒性の強いテクノを展開しつつ、究極の自己変革を掲げ、
新興宗教テンプル・オブ・サイキック・ユースを結成。

が、すぐに英国から国外退去を命じられ、NYに亡命。
当時の妻レディ・ジェイと愛し合うあまり、二人して、
性転換手術をくり返してお互いの外見に近づけるアート、
パンドロジェニー・プロジェクトを行う。その結果、
ジェネシスさんは女になってしまった。

ああ、ジェネシスさん。

僕にはあなたが1950年生まれというのが、
どうしても信じられません。たしかに国内を見渡すと、
水谷孝、灰野敬二、友川かずき、三上寛、早川義夫、
阿部薫、山口富士夫、柴田和志、遠藤ミチロウ、

あなたとほぼ同世代で素晴らしいミュージシャンは、
たくさん見つかります。でも、
あなたほど「ヤバい」人は日本に存在しません。

というか、
あなたはミュージシャンというより、
ただひたすら「ジェネシス・P・オリッジ」
であり続けただけなのかも知れませんね。

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[上毛新聞社さんにあきらめの水位展の様子を取材して頂きました。ありがとうございます]


ジェネシスさん。
僕があなたから教わった「アート」とは、例えば、
倫理的側面など一かけらもなく、とにかく、
「やればやるほど」周囲の人間が離れていくもの。

身体と意識両方のフォルムを変化させ続けながら、
ひたすら未開の領域を目指して突き進むもの。

そうした狂信的な姿に、
人は逆説的に愛を教えられてしまうもの。
それが本当のアートになり得るのだという、
確かな手応えです。

僕はあなたのようにいつまでも、
メタモルフォーゼし続ける存在でありたい。

どうか天国でレディ・ジェイと再会し、
永遠の愛を育みつづけてください。合掌

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[展示中の三毒バスタブ。両脇の水中ポンプが故障してしまったので停止中]

by kan328328 | 2020-04-09 19:08 | アート

美術作家・三宅感のブログです


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