もしもし聴こえますか?
2020年 06月 12日
何日も、何日も、
心はずっとうわの空であった。
大学ではかれこれ一ヶ月以上、
zoomでオンライン授業をしている。
プライバシーの配慮なのか、
生徒はみんな顔をふせており、
ズラリならんだ黒画面に向かって、
俺はひたすら話しかける、話しかける。
「皆さん、質問はありますかー?」
画面にさらし続けている俺の顔面は、
時間と共に汗でテカってくる、
テカってくる。
「聞きたい事はー?疑問はー?」
笑顔は引きつり、言葉もカラ回りして、
自分が何をしゃべってんのか不明なまま、
ようやく3時間(時に5時間)が過ぎ去る。
授業が終わると同時に、
ぐったりベッドに横たわる俺。
そして毎回、
「あーこのまま目覚めなくていいや」
と、思う。
オンライン講師に向いてないんだろか。
コロナが蔓延する以前のように、
直接一人一人と会って話すならまだしも、
ひたすら無表情な画面に語りかける言葉を、
俺はまだ知らない。この一方通行な感じも、
とてもコミュニケーションとは思えない。
とりあえず、死体になりきって少し眠る。
30分後、ガラケーのアラームが鳴ると、
俺は原付にまたがって利用者の家へ行き、
入浴介助をする。
額からしたたり落ちる滝の汗。
全身にのしかかる成人男性の重量。
超、密。ソーシャルディスタンスゼロ。
「これがリアリティーってやつだな・・」
と、思いながら、
石鹸でワッシャワッシャと洗う。
介助中、
隣室のテレビから聞こえてくるのは、
「都内の感染者が増えた」というニュース。
とにかく暗澹とするようなご時世だけども、
その不満を誰かのせいにはしたくない。
環境のせいにも、上司のせいにも、
お金のせいにも、道具のせいにも、
時間のせいにも、学校のせいにも、
生い立ちのせいにもしない。
全ての外的要因は、
「自分で選び取ったんじゃー!!」
くらい、言い放ちたい。
そんな自立した人間でありたいと思う。
本当に色々とクソくらえである。
ああ、いっそ、
美術などとは縁のない労働者のアートが見たい。
無口なチンピラがしたためた日記が読みたい。
どこをどう切り取っても、
表現の必然性しか感じられないような作品に、
心底出会いたい。
令和の色川武大は、エリックホッファーは、
住宅顕信はどこにいるんだろうか。
でも、それを探し求めるくらいなら、
自分で制作しようと思う。これからも、
二児の育児をしつつ、労働に汗をかきつつ、
一人で作り続けるしかないんだよな。
このブログの文体とそっくりなブログを、
LINEで教えてくれる人がいた。
俺は知ってたけど、別にいいやと思った。
むしろ誰かに影響を与えているのなら、
このブログを書き続ける意義もあるだろう。
そういう事、今までに何度もあったし。
また昨晩、
大学内でもかなり気合いの入ってる生徒から、
「今度グループ展をやりましょう!」と、
気合いの入ったLINEをもらった。
この子らいつも気合い入ってんなあと、
明るい気持ちになれた。なので、
「了解!」と返信して眠った。そして翌朝、
かなり気合いの入った寝坊をした。
by kan328328
| 2020-06-12 20:05
| アート