Y君について

中学の頃親しかったY君について書こうと思う。
俺は今、東京出てきて5年程経つけど、未だに五日に一回とかのペースで、ふと、Y君の事を思い出して、ぐわーっと胸がかき乱される。真夜中寝るとき、一人で豆電球見上げてる時とかに。
Y君は中学の頃、とにかく頭の冴える子だった。天才なんだなあってずっと思ってた。人の何気ない仕草、心の機微の変化、普段忘れてしまう曖昧な感情、そういったものに異常な程敏感な子で、何よりユーモアのセンスがあった。俺の何だかものすごいプライベートな感情やコンプレックスを的確に、ぐっさり指摘してきて、尚かつ笑わされた。俺は腹抱えて笑い転げてた、いつも。Y君という人がちょっと怖いくらいだった。ここまで全てが、細部に渡って見えちゃう人は、この先、やっていけるんだろうか?って勝手に心配してた。
席が隣同士だったので授業中も毎日話した。彼は「車泥棒をする瞬間の黒人の跳ね方」とか、チック症の真似が得意だった。
静かな授業中に、どっちが日常からかけ離れたとこまで行けるか、いつも勝負してた。俺が「ネムネムちゃん、折り紙で泣きたい」とか脈絡の無い事叫んで消しゴムかじったりすると、Y君も負けずに「つんなあ、神社持ってけ!」とか笑いながら机に頭突きしたりして、何か触発し合って、どんどんエスカレートして二人で訳わからないとこまでいってしまうのだった。
しかし、お互い中学を卒業して全く連絡を取らなくなってしまった。
ある日、俺はY君と同じ高校通ってる友達に「Y君、どうしてる?元気そうかい?」って聞くと「Y君、すっかり変わっちゃったよ。暗くなったし、面白い事何も言わなくなった。」との事だった。
意外ではなかった。何だか、あの少年は特別過ぎたもんなあと思った。
それでついこの前、って言っても去年、中学の友達が結婚したので式に出席した。そこにはY君の姿はなかったが、二次会になってレストランに移動して飲んでたら、ふらりとY君が現れた。8年ぶりだった。外見が全く変わらず、中学の頃のまんまだったのでびっくりした。でもY君の性格は確かに変わっていた。話しかけても一言二言ぽろっぽろっと呟いたかと思うとすぐに黙って、ずーっと伏し目がちだった。話を聞いている内に、どうやら彼は、高校も大学も行ったは良いが、自分が話し始めるとすぐに珍妙な目で見られて、いくらアピールしても周囲の理解が全く得られず、結局いつも一人だったらしい。
聞いてるうちに何だかたまらなくなって、口説き落とすくらいの勢いで俺はY君と真剣に話をした。俺も一生懸命当時の感覚のまんまで話をしたのでY君は最初、びっくりしていた。すごい!すごい!って喜んだかと思うと、急に悲しくなったのか、涙目になってしまった。みんながいるテーブルの下に潜り込んで「貴様なぜ俺を導く……」って言って、横滑りに宇宙飛行士がブースターを切り離す真似を始めた。そして二人で携帯番号を教え合って、別れた。
でも一週間前に俺の携帯壊れてメモリー全部消えた。
とても会いたいなあと思う。元気だと良いなあ。
by kan328328 | 2007-03-15 00:34 | 日常

美術作家・三宅感のブログです


by kan miyake
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