今、外で逢った青年

さっき、バイトの合間をぬって俺は一人、牛丼屋に出かけた。
外は雨がザーザーと降っていた。
店に向かう途中、大きな交差点の真ん中で、スーツ姿の青年が絶叫していた。
ふらふらと傘もささずに、ビルの壁やガードレールを拳でぼこぼこ殴ったり、頭突きをしたりしていた。自分の顔も容赦なく殴ってた。まるで駄々をこねる幼児のように激しかった。
青年の横を、サラリーマンの波がそ知らぬ顔で通り過ぎて行く。

俺はしばらく陰から青年の様子を眺めていたが、コンビニに入ると缶コーヒーを二つ買った。
青年は地下鉄に降りる階段にもたれて唸っていた。
俺は内心、自分までぶん殴られやしまいかと怯えつつ、近づいて行って缶コーヒーを渡すと、青年は一瞬驚いた顔をして、すぐに「いや。」と手を振りかざし、断った。
俺は俺で引き下がりたくないので、
「何があったか知らないけど、せっかく買ったんだから飲もう。」
と言って無理やり缶コーヒーを手渡した。
青年は「わかりました。」と言って、ようやくコーヒーを飲み始めた。
妙な時間が過ぎた。
青年の手には血が滲んでいた。口元は震えていて、今にも吐露してしまいそうな己の心情を、必死に堪えている様子だった。
俺は俺で、青年に何があったかも知らないまま勝手にシンパシーを感じてしまい、彼の二の腕をバンバン叩いたり、揺すったりした。そして、ほとんど言葉も交わさずに帰って来た。
別れ際に青年は、とても良い笑顔をした。

久しぶりに不器用で生々しい「人間」に会った気がして、ハッとした。
そういう人間の方が、屁理屈ばかり達者な人間より、ずっと美しいと感じてしまう。

今、映画の照明機材屋とラジオ局の宿直のバイトを掛け持ちしている。
お金が必要なのだ。
どちらも始めてからだいぶ経つ。
これからも頑張って行こうと思う。感
d0108041_035014.jpg

Commented by asako666666 at 2009-02-01 20:03
本能的に動物的に「優しさ」を備えた人間はなんて強いのだ、と思いました。
「優しい」人間はたくさんいると思いますが、その優しさと、この優しさは、どう違うんだろう・・・。
知識人、饒舌な人間の冷笑はいくらでも見た。無関心も嫌というほど居ました。
だけどKanさん自身は、自分の行動を分析して、それを優しさだとか、決して言わないのだろうな、とも思います。
青年も、Kanさんのことを想うでしょうね。
忘れられないと思います。

この絵はKanさんが描いたんですか?
キョロキョロ落ち着かない弟、母の膝の上で甘えるお姉さん、母の微笑みは確かな愛情を感じさせる。母性で包み込んだような絵ですね。それに対して父性はどこか見え隠れして、母のそれよりも危うさを感じてしまう。でも娘の背中を抱いた手だけが、確かに父のものであるとわかる。そう感じました。
Commented by kan328328 at 2009-02-01 21:49
asako666>上の絵はピカソの絵です。ピカソっていうとアカデミックな印象しかなくて、「良い絵だ」と思った事がなかったのですが、甘かったです。彼のキュビズムの絵にはたっくさん良い絵があるのです。明らかにフランシスベーコンに影響を与えたであろう絵や、ドンヴァンフリート(ビーフハート)に影響を与えたであろう絵ってのもあります。
ピカソをなめていました。

知識人の無関心にはうんざりです。
その事についていろいろと書きたいと思います。

Commented by asako666666 at 2009-02-03 00:29
まさかピカソとは!!!!
いやほんと、びっくりしました。これはピカソの画集を買ってみないと!
by kan328328 | 2009-01-31 00:39 | 日常 | Comments(3)

美術作家・三宅感のブログです


by kan miyake
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30