今、外で逢った青年

さっき、バイトの合間をぬって俺は一人、牛丼屋に出かけた。
外は雨がザーザーと降っていた。
店に向かう途中、大きな交差点の真ん中で、スーツ姿の青年が絶叫していた。
ふらふらと傘もささずに、ビルの壁やガードレールを拳でぼこぼこ殴ったり、頭突きをしたりしていた。自分の顔も容赦なく殴ってた。まるで駄々をこねる幼児のように激しかった。
青年の横を、サラリーマンの波がそ知らぬ顔で通り過ぎて行く。

俺はしばらく陰から青年の様子を眺めていたが、コンビニに入ると缶コーヒーを二つ買った。
青年は地下鉄に降りる階段にもたれて唸っていた。
俺は内心、自分までぶん殴られやしまいかと怯えつつ、近づいて行って缶コーヒーを渡すと、青年は一瞬驚いた顔をして、すぐに「いや。」と手を振りかざし、断った。
俺は俺で引き下がりたくないので、
「何があったか知らないけど、せっかく買ったんだから飲もう。」
と言って無理やり缶コーヒーを手渡した。
青年は「わかりました。」と言って、ようやくコーヒーを飲み始めた。
妙な時間が過ぎた。
青年の手には血が滲んでいた。口元は震えていて、今にも吐露してしまいそうな己の心情を、必死に堪えている様子だった。
俺は俺で、青年に何があったかも知らないまま勝手にシンパシーを感じてしまい、彼の二の腕をバンバン叩いたり、揺すったりした。そして、ほとんど言葉も交わさずに帰って来た。
別れ際に青年は、とても良い笑顔をした。

久しぶりに不器用で生々しい「人間」に会った気がして、ハッとした。
そういう人間の方が、屁理屈ばかり達者な人間より、ずっと美しいと感じてしまう。

今、映画の照明機材屋とラジオ局の宿直のバイトを掛け持ちしている。
お金が必要なのだ。
どちらも始めてからだいぶ経つ。
これからも頑張って行こうと思う。感
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by kan328328 | 2009-01-31 00:39 | 日常

美術作家・三宅感のブログです


by kan miyake
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